マンション修繕なびコラム 修繕積立金「段階増額積立方式」の適正ラインは?~修繕積立金ガイドラインから~

2026.7.10

修繕積立金「段階増額積立方式」の適正ラインは?~修繕積立金ガイドラインから~

マンションの修繕積立金は、管理組合の計画的な修繕に備えるために積み立てる大切なお金です。

ところが多くの組合では、購入時の負担を軽く見せるために、当初の積立額が低く設定され、後から段階的に引き上げていく「段階増額積立方式」が採用されています。

この方式は、一見妥当な計画に見えますが、計画通りに値上げが実施できなければ、資金が不足し必要な修繕が行えなくなるおそれがあります。こうした問題を踏まえ、国土交通省はガイドラインを改定し、段階的な値上げ幅の「適正ライン」を示しました。

この基準は新築マンションに適用されるものですが、既存マンションの修繕積立金を見直す際の重要な目安にもなります。

本記事では、ガイドラインが示すポイントと、管理組合が値上げの議論をどのように進めるべきかをご説明します。

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1. 修繕積立金の「段階増額積立方式」とは

修繕積立金の「段階増額積立方式」とは、積立額を段階的に増額していく方式です。
この方式は、次のような特徴があります。

  • ・初期負担を軽くするために、販売当初は安く設定されている
  • ・長期計画の中で段階的に増額される
  • ・最終的には必要額に到達させる

一方で、段階増額積立方式には次のようなリスクがあります。

  • ・将来の値上げを前提としている
  • ・計画された値上げができず、修繕積立金が不足する場合がある

この方式に対し、「均等積立方式」という考え方もあります。
これは、長期修繕計画で想定される将来の修繕費総額を一定期間で割り戻し、毎月一定額を長期にわたり積み立てていく方式です。

▶コラム「修繕工事、成功のポイント

2. 段階増額積立方式の「適正ライン」

国土交通省は、将来の資金不足を防ぐため、段階増額積立方式の適正ラインを次のように示しました。

「段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とした場合、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。」

国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より抜粋

基準額:長期修繕計画(30年間など)にかかる総費用を、期間中均等に割り振った場合の月額料金(=均等積立方式の額)。
初期額:基準額の「0.6倍以上」。これより安く設定しない。
最終額:基準額の「1.1倍以内」。これより高く設定しない。

つまり、
「最初(計画スタート時)の金額から最終金額への値上げ幅は、最大で約1.8倍まで」という数値が、国の示した適正ラインです。
(※1.1÷0.6=1.8)

(国土交通省:段階増額積立方式における適切な引上げの考え方)

3. 具体例 総戸数100戸の組合の場合

例えば、総戸数100戸、長期修繕計画30年間に累計修繕費4億円を予定している組合の場合、国のガイドラインを当てはめると以下のようになります。

例 総戸数100戸
長期修繕計画30年間の総費用4億円
基準額(均等方式)
戸当たり平均修繕積立金月額
4億円÷30年間≒1,333万円/年
(1,333万円÷100戸)÷12か月
≒11,100円/戸、月
段階増額方式
戸当たり平均修繕積立金月額
初期値: 6,660円/戸、月 以上
最終値:12,210円/戸、月 以下

計画初期値は「基準額×0.6」、計画最終値は「基準額×1.1」で算出します。
この例では、均等積立方式の基準額11,100円に対して、初期値は6,660円以上、最終値は12,210円以下に収めるのが目安です。

4. 適正ラインを明示したねらい

段階増額積立方式の場合、修繕積立金の値上げを怠ると、将来的に「大規模修繕時の資金ショート」や「数十~百万円単位の一時金徴収」という事態を招きかねません。
このため国は、実際に引き上げ可能な水準として、段階増額方式の適正ラインを明示したのです。

しかし、国が本当に目指しているのは、段階増額の枠内でやりくりすることではありません。

ガイドラインでは、「実現可能な値上げを早期に行い、最終的には『均等積立方式』へと移行することが目的であり、そのための基準超えの値上げは制限しない」としています。

つまり、段階増額を続けるのではなく、「早く値上げをして、毎月定額の均等積立方式に切り替えなさい」というのが国の本音なのです。

5. 「均等積立方式」導入が難しい理由

国が早期の移行を促す「均等積立方式」ですが、すでに「段階増額積立方式」を採用している既存の管理組合での導入は、導入初期の負担感が大きいという問題があります。

既存の管理組合での「均等積立方式」の採用、とりわけ分譲時の積立金が低いマンションでは、導入時の上げ幅が大きく「来月から毎月の負担が2倍〜3倍になる」といった急激な負担増になりかねません。
年金暮らしの高齢世帯や、売却を考えている世帯から反対を受けやすく、議論自体が頓挫するリスクもあります。

▶コラム「修繕積立金の目安は?ガイドラインから見る修繕積立金

6. ガイドラインを活用して議論を始めよう

さまざまな課題はあるものの、国によって「適正ライン」という明確な物差しが示されたことは、これまで値上げに踏み切れなかった管理組合にとって、議論を始める絶好のチャンスです。

まずは、次の3つのポイントから管理組合の現状をチェックしてみることをおすすめします。

  • ・長期修繕計画の初期額と最終額は1.8倍以内に収まっているか
  • ・1.8倍に値上げしても、想定工事累計額を下回っていないか
  • ・長期修繕計画は定期的に(5年程度ごとに)見直されているか

▶コラム「見直し必須!長期修繕計画書その重要性

このガイドラインを活用して住民の理解を深め、適正な積立を行うこと、そして適切なタイミングで修繕工事を行うことが、マンションの資産価値を維持するための大切な一歩となります。

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いかがでしたか?
修繕積立金の値上げは、管理組合にとって切実な課題です。しかし、ガイドラインという目安ができた今こそ、マンションの未来を守るための議論を始める絶好のタイミングではないでしょうか。
マンション修繕なびでは、長期修繕計画や修繕積立金の見直しに関する専門家とのマッチングサービスで、管理組合の修繕や管理をサポートしています。初回無料相談や無料セミナーも、ぜひご活用ください。

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マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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