マンション修繕なびコラム 修繕積立金は足りている?資金計画の落とし穴

2025.10.9

修繕積立金は足りている?資金計画の落とし穴

「うちは積立金があるから大丈夫」
そう思っていた管理組合が、いざ大規模修繕の見積を取ってみると、資金が足りない。そんなケースが近年、決して珍しくありません。
修繕積立金が「ある」ことと「足りている」ことは、まったくの別問題です。
資金計画の見落としが、将来的な負担増や住民間の合意形成の混乱を招くこともあります。


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1.よくある落とし穴

長期修繕計画が”机上の理想”になっている

長期修繕計画は、マンションの将来像を描く大切な資料です。
しかし、作成された時点では合理的だった計画も、時間が経つにつれて現実との乖離が生じます。

ほとんどのマンションでは、新築の修繕積立金を抑える傾向にありました。そのため、築12年時に大規模修繕を実施する際は、積立金の値上げをしていることが前提になっていることもあります。
大規模修繕までに積立金の値上げが合意できなければ修繕積立金も足りないことになります。

他にもよくあるのが、「予定通りに積み立てていれば、30年目の大規模修繕に対応できる」という前提が、現実には成り立たないケースがあります。

なぜなら、住民構成の変化や管理方針の転換、設備の劣化スピードなど、現場の状況は常に動いているからです。
計画上は「15年周期で外壁改修」「25年目に給排水管更新」といった理想的なスケジュールが並んでいても、実際には「仕様を変更して増額になった」「想定外の項目が増えた」「変更に伴い工事を先延ばしにした」などの履歴が積み重なり、計画通りに進まないことが多々あります。

インフレ・資材高騰・工事仕様変更などが反映されていない

もうひとつの見落としが、経済環境の変化を反映していないことです。
近年はこちらの見落としが相当増えています。

建設業界では資材価格の高騰や人件費の上昇が続いており、10年前の単価で見積もった工事費は、現在ではまったく通用しません。

たとえば、外壁塗装の材料費は、2020年以降で20〜30%以上上昇したケースもあります。
さらに、足場設置や防水工事などの専門職の人件費も上がっており、工事全体のコストは年々増加傾向にあります。

長期修繕計画は、前回の実績をもとに金額を設定することが多く、多少の増額は想定していたとしても追いついていない現状が見られます。

加えて、工事仕様の変更も見逃せません。
以前は「最低限の防水処理」で済んでいた箇所が、現在では「長寿命型の高性能仕様」が推奨されるようになっているケースがあります。

これにより、計画時よりも工事費が大幅に膨らむことがあるのです。 結果として、仕様のグレードダウンや一時金徴収、借入などの議論が持ち上がり、住民間の合意形成が難航することになります。

資金計画は”定期点検”が必要

これらの落とし穴を避けるためには、資金計画の定期的な見直しが不可欠です。

長期修繕計画書は5年ごとに更新されていることが多いですが、実際の工事費の相場感をつかむことが重要です。
修繕委員会と管理会社、設計事務所が連携し、現場の実態と数字をすり合わせるプロセスが求められます。

まとめ

近年の物価高騰や建設費は過去の想定を上回っていると同時に急激に上昇しています。15年前に行った大規模修繕と同仕様であったとしても、2倍近い金額がかかることも珍しくありません。
長期修繕計画の見直しを定期的に行うだけでなく、実際の修繕の相場感を正しく反映させることが重要となってきます。


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いかがでしたか。
大規模修繕を満足に行うためにも、資金計画を入念に行う必要が求められます。
マンション修繕なびでは、相見積サービスや設計事務所の紹介も行っています。
「想定していたよりも高額な見積がでてきた」など、修繕費の妥当性を確認するために、活用してみてはいかがでしょうか。

黒木 淳
(マンション管理士)

大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。

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