
2025.10.14
修繕のプロが見た、住民アンケートのリアル
大規模修繕工事を行う上で、住民からの意見を取り入れることはとても重要です。
意見を取り入れるために、アンケートを実施する管理組合も少なくないでしょう。
本記事では、アンケートのリアルを紹介していきます。
1.アンケートの意義
「外壁の色はA案とB案、どちらがいいですか?」
そんな設問から始まる住民アンケートを、大規模修繕の現場で何度も目にしてきました。選択肢を提示し、住民に多数決を取るという方法は、一見、民主的で合理的な手法に見えますが、実はこの設計が合意形成を遠ざけてしまうことがあります。
集計の結果、僅差や同数の場合に意思決定が出来なかったり、多数決で選ばれなかったほうに不満が残ったりするなど、新たな問題が出てくることも考えられます。
住民の価値観や不安、希望を”見える化”し、合意形成を円滑に進めるための対話の起点です。
つまり、アンケートは「何を選ぶか」ではなく「何を考えているか」を知るためのものなのです。

2.選択肢だけでは見えない”暮らしの声”
選択肢だけでは、住民の背景や理由は見えてきません。たとえば「外壁は白がいい」と答えた人が、景観との調和を重視しているのか、汚れが目立たないことを期待しているのかでは、まったく意味が違います。こうした”行間”は、自由記述欄や設問の工夫によって初めて浮かび上がります。

3.設問設計の工夫
設問設計においては、「どちらを選びますか?」ではなく、「何を重視したいですか?」「何が気になりますか?」といった問いかけが有効です。
たとえば、以下のような設問は有効です。
・「工事中に不安に感じることは何ですか?」(自由記述)
・「過去の修繕で困ったことや改善してほしい点はありますか?」
・「今回の修繕で特に重視したい項目を選んでください(複数選択可)」
・「住戸内での作業について、どのような配慮があると安心できますか?」
こうした設問は、住民の”暮らしの声”を拾うだけでなく、理事や委員が「どこに説明が必要か」「どこに摩擦が起きそうか」を事前に把握する手がかりになります。
さらに、属性別(年代・居住年数・家族構成など)に傾向を分析することで、合意形成の戦略も立てやすくなります。

4.まとめ
アンケートは、設問の設計ひとつで住民の反応は大きく変わります。
選択肢の集計だけでは見えない”暮らしの温度感”を、行間から丁寧に読み解くことが、理事や修繕委員に求められる”合意形成の技術”なのです。

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いかがでしたか。
修繕アンケートは大規模修繕を円滑に進めるための手助けになることもありますが、方法によっては余計に混乱を招く恐れもあります。専門家などに相談して適切なアンケートを作成してみましょう。
マンション修繕なびでは、マンション管理士や設計事務所の紹介を行っております。アンケートに限らず大規模修繕について不安があれば一度相談してみてはいかがでしょうか。

黒木 淳
(マンション管理士)
大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。
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