マンション修繕なびコラム 修繕工事、成功のポイント

2024.10.24

修繕工事、成功のポイント

マンションで予定されている工事について、皆さんはしっかり把握されていますか。マンションの共用部で行われる工事には、日常修繕と計画修繕の2種類があります。
日常修繕とは、駐輪ラックが故障した、防犯カメラの一台が故障した等々、日常で起こる故障や不具合に関する規模の小さな修繕で、管理費から支出されます。

一方、計画修繕とは、鉄部塗装やインターホンの取替、機械式駐車場の大掛かりな補修や更新などです。これらは長期修繕計画書に記載され、修繕費用は総会の承認を得た上で、修繕積立金から支出されます。
この記事では、計画修繕において合意形成の重要性とその方法についてご説明します。

1.計画修繕と長期修繕計画書

計画的な修繕は、マンションの資産価値を維持し、住環境を保つために欠かせません。このため、長期的に発生する修繕の内容や費用を明らかにし、修繕のための資金を積み立てておくために、長期修繕計画書を作成します。

この、長期修繕計画書は修繕積立金の根拠ともなり、マンションにとって非常に大切な資料です。
参照「見直し必須!長期修繕計画書その重要性」

しかし、長期修繕計画で修繕の時期や費用が明記されていても、必ずしも計画通りに実施されるものではないのが、計画修繕工事です。

2.計画修繕実施の検討時に確認すべきこと

計画修繕工事の実施に際して、修繕委員会や理事会でその内容や費用を検討する必要があります。このとき考慮すべきことは下記の3点です。

・修繕箇所の修繕周期
・修繕箇所の劣化度合
・修繕積立金の残高

修繕周期が来ていたとしても、状態の良いものは工事の先延ばしが可能です。一方で、修繕積立金が潤沢であれば、劣化度合いに関わらず、周期の到来に合わせて修繕する組合もあるでしょう。
劣化が進んでいる場合は、修繕の前倒しが必要になることもあります。また、修繕積立金が不足している場合には、計画とは異なる、より安価な手法による修繕箇所の延命を図る必要があるかもしれません。
このように、修繕の実施には様々な選択肢があるのです。

また、実施において総会承認を得る必要がある計画修繕工事では、修繕の必要性、工事金額や工事会社の妥当性について理事会は組合員に対し明らかにしなければなりません。1社の見積もりにOKを出すだけでは、その見積もりの妥当性について説得力を持たせることができません。そこで、理事会には、複数社から見積もりを取得し比較検討を行うことが求められます。

3.修繕工事の成功に欠かせないもの

すでに述べたように、計画修繕工事は慎重に検討を重ね、組合員の合意形成を図る必要があります。特に、機械式駐車場の減築や撤去など、組合員の間で利害が相反する事案については、より慎重に検討しなければなりません。
参照:「どうする?どうなる?マンションの機械式駐車場」

多くの組合員の合意を得るために欠かせないポイントは下記の4点です。

①情報をオープンにする
・検討している修繕を早い段階から公表する
・計画修繕の内容とその時期および概算工事費を示し、修繕積立金に及ぼす影響を明確にする
・計画修繕が居住者や組合員に与える影響を公表する

②説明の場を設け、意見を募る
・総会とは別に説明会を設ける
・アンケート等で管理組合員から意見を募る

③比較検討の内容を開示する
・修繕費用の相見積もりを取得し、その内容を開示する

④時間をかけて検討を進める
・複数年の理事会で検討することが時に必要となる

計画修繕に関しては、理事会での検討だけでなく、組合員へのお知らせも、早い段階(総会で議案化する前)に行うべきです。総会での決議の段階で初めて公表となると、組合員の不信や不満を招く怖れがあります。

4.事例:前倒しになった玄関扉交換工事

計画修繕の前倒し実施事例を一つご紹介します。某マンションでは、築35年目に予定していた玄関扉の交換工事を築26年で実施しました。

修繕時期は到来していなかったものの、劣化が著しく進んでいるとの一部組合員からの申し出を受け、実際に確認して回ったところ、同じマンション内でも階数や玄関の位置、雨のかかり具合等により、玄関扉の状態は大きく異なっていることが明らかとなりました。

理事会は、塗装や清掃で状態を回復させる方法も考慮した上で、玄関扉交換方法について複数のプランを取得し、相見積もりを比較検討。費用を抑えた取替案を総会に提出し、承認を得るに至りました。計画よりもかなり早期の取替となりましたが、組合員の納得の上で実施することができました。

5.まとめ

計画修繕に関する合意形成の鍵は、組合全体からの信頼獲得です。これは、早い段階からの情報開示と透明性の確保によって可能となります。
一つ一つ丁寧に検討を重ね、その内容を早期にオープンにしていくことで組合員から信頼を得やすくなり、合意形成への意識も高まることでしょう。

いかがでしたか?
共同所有という所有形態を持つマンションにおいては、組合員の合意形成をどのように図るかが大変重要です。先にご説明したように、時間をかけて検討を進め、つど情報を開示することで、組合員から合意を得ることが可能となるでしょう。
合意形成に欠かせない相見積もりの取得は、マンション修繕なびをご活用ください。審査を経た安心できる事業者や専門家をご紹介し、管理組合主体のマンション運営をお手伝いしています。

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マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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