マンション修繕なびコラム マンションの設備点検と費用削減策

2025.9.22

マンションの設備点検と費用削減策

マンションには、暮らしを支えるさまざまな設備が備わっています。エレベーター、消防設備、貯水槽、給排水管など、その種類は多岐にわたります。

これらの設備の中には、法律で定期的な点検が義務付けられているものがあります。たとえば、消防設備の点検は年2回、エレベーターの定期検査は年1回以上の実施が義務付けられています。
これらは「法定点検」と呼ばれ、実施しない場合は罰則が科されることもあります。

こうした点検は、多くの管理組合で管理会社に任せきりになっているのが実情です。しかし、管理組合が点検の内容を正しく理解できれば、委託先の見直しによって費用を削減できるかもしれません。

本記事では、マンションの安全性を保つために必要な設備点検と、その費用を削減するための対策についてご説明します。

 本記事は、2025年7月に開催されたマンション修繕なび セミナー「管理(委託)費削減したければ法定点検しること!」(講師:マンション管理士 中島 康済氏)の一部を参考に作成しています。

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1.各種設備点検の内容と頻度

①エレベーター点検

エレベーターの点検には、法律で義務付けられている「法定点検」と、安全維持のための「保守点検」の2種類があります。

点検費用は「フルメンテナンス契約※1」と「POG契約※2」によって異なります。

※1通常使用による部品の交換・修理がすべて含まれる契約

※2点検と消耗品交換は含まれるが、それ以外の修理費用は別途請求される契約

②特定建築物定期調査

「特定建築物定期調査」とは、建築基準法に基づき実施される調査です。
管理者(分譲マンションの場合は管理組合)は、3年ごとに建物の安全性を調査し、行政に報告する義務があります。
※分譲マンションの多くは、「特定建築物」に分類されます。

点検箇所点検内容
敷地・地盤排水状況、避難通路の確保、塀や擁壁の状況など
建物外部外壁の劣化や損傷、窓やサッシの状況など
屋上・屋根屋上面、屋根の劣化や損傷、排水設備の状況など
建物内部防火区画、壁、床、天井、照明器具、換気設備などの劣化や損傷、採光・換気の状況など
避難施設・非常用進入口避難経路、避難階段、排煙設備、非常用照明装置などの状況

③建築設備定期検査

建築設備定期検査とは、建築基準法基づき、不特定多数が利用する施設や、一定の規模以上の建築物が対象となる検査です。設置された設備が適切に機能しているかを確認します。
建築設備定期検査の対象となる主な建築設備は、以下の通りです。

 ・換気設備
 ・排煙設備
 ・非常用の照明装置
 ・給排水設備

皆さんのマンションが検査対象か、確認する必要があります。

④消防設備点検

マンションは「非特定防火対象物」に該当します。半年ごとに点検を行い、3年ごとに報告書を管轄する消防署に提出する義務があります。

管理組合は消防設備点検を実施するほかにも、防火管理者を選任し、消防計画の作成や消防訓練等を行わなければなりません。

防火管理者については▶コラム「マンションの防火管理者」をご参照ください。

⑤水質検査

マンションに貯水槽が設置されている場合、その設備は「簡易専用水道」として水道法の適用を受け、定期的な検査を受ける必要があります。
受水槽を持つ管理組合では、受水槽清掃とセットで検査を実施することが一般的です。

マンションの給水方式については▶コラム「知ってる?マンションの給水方式」をご参照ください。

2.費用削減には「相見積もり」の取得が効果的!

このように、マンションには様々な設備点検の義務があります。ほかにも、機械式駐車場を所有する組合は定期的な保守点検が求められます。また相見積もりを取得し、点検費用が適正であるかどうかを確認することは、組合の支出削減に効果的です。

例えば、消防設備点検の相見積もりを取得し、「管理会社委託」から「組合直接契約」に変更した組合では、点検費用だけでなく、点検後に発生した機器交換費用も大幅に削減できたケースが珍しくありません。

各種点検業務を直接契約に変更しようというとき、「管理会社との関係」を心配する組合からのご相談が多く寄せられます。しかし、直接契約は特殊なことではありません。点検後の各監督機関への届け出も点検事業者が代行してくれますので(届け出代行業務の契約を必要とする)、組合運営に支障はないでしょう。相見積もりを取得し、費用削減効果が大きければ躊躇なく行うべきです。

組合の相見積もり取得について▶コラム「新!「マンション修繕なびアプリ」使用感レポート」をご参照ください。

3.まとめ

近年、人件費の高騰などで設備点検費用の値上がりが続いています。管理組合は設備点検の内容を知り、委託先の見直しなど、さまざまな手段を講じて財政の健全化を図ることがますます必要になっているのです。

名称点検内容頻度点検者
エレベーター点検安全上問題なく維持されているか年1回有資格者
特定建築物定期調査外壁、避難設備、安全設備等が適正に維持されているか3年毎有資格者
建築設備定期検査設備が適切に機能しているか年1回有資格者
消防設備(機器)点検消防設備の外観や操作など、目視・手動操作による点検半年毎有資格者
消防設備(総合)点検実際の火災を想定して連動作動や通報の確認を行う点検年1回有資格者
簡易専用水道検査貯水槽の有効容量が10㎥を超える施設で、水質検査、
設備点検などを含む包括的な検査
年1回有資格者


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いかがでしたか?
マンションには多くの法定点検が義務付けられています。
これらを管理会社任せにするだけでは、所有者としての責任を果たしているとは言えません。
管理組合は、点検内容を理解し、自律的な運営を行うことが必要です。
マンション修繕なび では、設備点検や機器更新の相見積もり取得をお手伝いしています。経費削減を進めたい!とお考えの組合は相見積もりで得られる経費削減効果を実感してください。

マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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