
2025.5.19
大規模修繕工事 「ロープ・ブランコ工法」という選択肢
マンションの大規模修繕工事といえば、マンションの壁面に設置される足場とネットで囲まれた姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 工事期間中は日照が遮られるだけでなく、視界や風通しなども悪くなるため、悩ましいものです。これらの問題解決に期待できるのが「ロープ・ブランコ工法」と呼ばれる工事方法です。足場を組む必要がなく、工事費用削減にもつながります。この工法が普及すれば、大規模修繕工事の風景が一変するかもしれません。
この記事では、マンションの大規模修繕工事の新しい選択肢となりえる「ロープ・ブランコ工法」についてご説明します。
※本記事は、2024年11月に開催されたマンション修繕なび セミナー「大規模修繕工事、ロープ・ブランコ工法という選択肢」(講師:株式会社エーファイブ 代表木村康三氏)をもとに作成しています。
▶セミナー動画はこちらをご覧ください 「ロープ・ブランコ工法とは 前編」
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1.ロープ・ブランコ工法とは
ロープ・ブランコ工法とは、大規模修繕工事において屋上からロープを利用してブランコに座りながら作業を行う修繕方法です。「無足場工法」・「ロープアクセス工法」とも呼ばれます。従来工法で使用される足場を必要としないため、工事費用の低減や防犯性の向上などにつながります。
特に、下記特徴を持つマンションには、メリットが大きいでしょう。
・縦長形状のマンション
・足場設置が困難なマンション
・傾斜地にあるマンション

2.ロープ・ブランコ工法のメリット・デメリット
近年、マンションの大規模修繕工事費用は値上がりが続いています。足場の設置費用は工事費全体の約20%を占め、大規模修繕工事高騰の要因の一つに挙げられています。一方、ロープ・ブランコ工法は足場を設置する必要がありません。工事費用を大幅に削減でき、コストを削減したい管理組合にはメリットのある工法と言えるでしょう。 このほかにもロープ・ブランコ工法の採用には下記メリットがあります。
ロープ・ブランコ工法採用の主なメリット
・足場を大幅に削減できるため、工事費用を削減できる
・防犯面で有効である(足場のように人が登ることが不可)
・仮設設置期間が短い
・足場設置時の工事騒音が無い
・足場の設置が難しい建物でも工事が可能 ほか
一方、デメリットは、マンションによって工期が1.3倍ほど伸びる可能性があることです。
3.ロープ・ブランコ工法で削減できる費用は?
講師の木村氏は、マンションの大規模修繕工事にロープ・ブランコ工法と一部足場を残したハイブリッド工事を提案しているそうです。それでも、通常の足場工事の1/3~1/4ほど費用を抑制できるとのこと。
㈱エーファイブの木村氏によると、足場の設置費用が2,000万円だった場合、ロープ・ブランコ工法の採用で800万円前後 の費用が安くなり、大規模修繕工事の総額を削減できる、他の設備更新に費用を充てられるなど、組合の選択肢が広がるとのことでした。
注意)建物の状況により抑えることのできる費用は異なります。また、ロープを設置できないマンションや、通常足場の方が安価に施工できるマンションもあるため、総合的な判断が必要です。
4.メリットはわかるが、それでも不安?
このようにメリットが多いロープ・ブランコ工法ですが、採用には不安・・ ・という声もあります。その多くが安全性への懸念です。木村氏によるとロープ・ブランコ工法は、労働災害の統計で、一般的な足場等と比較して事故が多いというデータはなく、自信を持って提案できるとのことでした。
ロープ・ブランコ工法について詳しくは、▶株式会社エーファイブのホームページをご覧ください。
最後にセミナー参会者から、「なぜロープ・ブランコ工法は普及しないのか?」という質問が寄せられました。木村氏は、“新たな手法への挑戦には合意 形成のハードルが高いこと”や、“現状は作業員が限られている点”などをその理由に挙げました。
私はマンション管理士として、管理組合が新たな工法を採用することの難しさ、ハードルの高さを実感しています。しかし、多くの組合にとって修繕費の削減は待ったなしの課題です。管理組合は、 新たな工法やサービスについて幅広く情報を収集し、活用する必要があるのではないでしょうか。

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いかがでしたか?
大規模修繕工事の選択肢として、ロープ・ブランコ工法の可能性をご理解いただけましたか。どのような分野でも、新たな手法の採用には勇気が必要です。
しかし、組合にとって良い選択肢であれば、採用を検討する価値は高いのではないでしょうか。

マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)
国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com
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