2024.8.28
給排水管の更新・更生工事 築30年以上マンションの正念場
築30年以上のマンションに必要となる修繕の一つに、「給排水管更新・更生工事」があります。この工事は非常に高額で、修繕積立金が不足する組合では取り掛かることが出来ないこともしばしばです。しかし、老朽化した給排水管によるトラブルがマンションにもたらすダメージは深刻です。
そこで、老朽化した給排水管トラブル、給排水管の更新・更生工事のメリット・デメリット、事業者選定などについてご説明します。
1.老朽化した給排水管が引き起こす問題
老朽化した給排水管が引き起こす問題に、「漏水」があります。
特に築30年を超過したマンションでは漏水事故が多発する傾向にあります。漏水を放置するとコンクリート内部の鉄筋を腐食させ、建物の劣化を促進する恐れがあるため、給排水管の腐食が進む前に対応する必要があります。
2.給排水管の更新・更生とは
給排水管の「更新工事」は、既存の配管を撤去し新規配管を設置する工事です。一方、「更生工事」は、既存の配管は残し配管内を研磨洗浄の上、特殊な樹脂で配管内をコーティングする工事です。(更生工事は、給排水管の状態を確認する検査が必須で、給排水管内の劣化の程度により採用不可の場合もあります。)
この二つにはそれぞれメリット、デメリットがありどちらを採用するか、管理組合で慎重に検討する必要があります。
3.給排水管の種類と耐用年数
マンションの給排水管には、主に下記の種類の配管があります。
それぞれの耐用年数は、配管の種類や設置場所および使用材質などにより異なります。最近建設されているマンションは、塩ビ系の劣化しにくい配管が採用されており、対応年数が延びていますが、1990年以前に建てられた30年を経過したマンションでは鉄材料が使われている場合多く、錆の発生等で劣化が進んでいる可能性があります。
4.更新・更生工事の範囲と費用負担
マンションの給排水管は共用部と専有部の両方にまたがって敷設されています。管理組合は共用部分に属する給排水管の更新・更生する義務を負い、その分の費用を積み立てます。一方、専有部(部屋内)は所有者負担で更新・更生するのが原則です。
とはいえ、老朽化した給排水管を放置すると漏水により躯体の劣化を招くのに、共用部と専有部に違いはありません。マンションを守るという意味では、共用部だけの工事では不十分なのです。
ところで、昨今マンション火災保険の値上がりが続いており、その背景の一つに、給排水管の老朽化による水漏れ事故の増加があります。マンションで火災保険を利用する約半数が水漏れによるものとも言われているのです。そこで保険会社は、給排水管の更新・更生工事を行ったマンションに対して割安な保険料となる保険商品を売り出し始めました。建物の劣化予防だけでなく、火災保険の観点からも更新・更生工事の実施は検討に値するでしょう。
5.専有部の給排水管の更新・更生をどうするか
管理組合は、専有部の工事費用をだれの負担とするかで合意形成できず、給排水管の更新・更生工事に着手できないことがあります。共用部の工事費だけしか積み立てていない組合が、専有部の工事費も支出しようとすると、修繕積立金が不足するのは当然です。また、専有部の更新・更生には内装の解体・復旧が伴い、高額な費用を要する事実もあります。原則として、専有部に関する工事費は各戸負担とすべきですが、中には負担できない所有者もあり、膠着状態に陥るのです。
手遅れになる前に専有部給排水管の問題を所有者全体で共有し、工事の範囲や費用負担など話し合いを進めることが重要です。
6.コンサルタントの採用を検討する
以上ように、給排水管の更新・更生は管理組合だけで対応するのは難しい工事です。高額な費用を要する点からも、専門家(コンサルタント)の活用が推奨されます。
良いコンサルタントを採用すれば、他の組合の工事例やコスト削減策の提案を受けることができるなど、費用を上回るメリットを享受できるでしょう。例えば、配管を更新する際に露出配管という選択肢があると専門家から助言を受け、工事費の大幅抑制を実現したマンションがあります。次回の給排水管更新・更生工事についても説明やアドバイスを得ることができ、早期に対策を講じることが可能となる等、コンサルタントを採用するメリットは非常に大きいでしょう。
コンサルタントは大規模修繕工事にだけ活用するものではありません。長期に及ぶマンション運営の中で、コンサルタントからアドバイスを受ける機会は少なくありません。長く付き合えるよいコンサルタントを比較検討した上で採用することが推奨されます。
7.事業者も比較検討して選ぶ
コンサルタントの採用と併せて重要なのは、事業者も比較検討して選ぶことです。比較するのは工事費だけではありません。更新・更生についてそのメリットやデメリットを丁寧に説明してくれるか、組合の意向を工事に反映してくれるかなど、事業者の良し悪しを直接会って(コンペを開催するなどして)確かめることが大切です。
いかがでしたか?
給排水管更新・更生工事では、大規模修繕工事とは異なる問題も相まって、実施できない組合が多くあります。また、築30~40年という時期は管理組合の財政が厳しくなっている時期でもあり、よりハードルが高くなる恐れがあります。
マンション修繕なび では、大規模修繕工事のみならず給排水管更新・更生工事においても事業者選定のお手伝いしています。工法選定や事業者選定をアドバイスするコンサルタントとのマッチングから、事業者選定のための相見積もり取得まで、審査をパスした事業者をご紹介します。高額な費用を費やす工事だからこそ、比較検討ができるマンション修繕なび のサービスをご活用ください。
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コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)
国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com
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