マンション修繕なびコラム 徹底解説!給排水管の更新工事

2025.8.14

徹底解説!給排水管の更新工事

マンションの建物中を張り巡らされる給排水管は、その用途別に「給水管」「給湯管」「雑排水管」「汚水管」「雨水管」とさまざまあり、マンションの快適な暮らしを支える重要なインフラです。

これら給排水管は、築30~40年頃に更新の時期を迎えます。この工事は、マンションを永く安心して使い続けるために避けて通ることは出来ません。

本記事では、給排水管の更新工事について、詳しく説明します。

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1.マンションの給排水管とはどんなもの?

マンションの「給排水管」とは、生活に必要な水を届け、使用後の水を排出するためのパイプ(管)類のことです。建物内外を通り、給排水させるために欠かせない設備の一部です。
給排水管は用途別に5種類あり、それぞれに使われる主な材料が異なります。

管の種類により、特徴が異なります。種類別の特徴は下記の通りです。

【硬質塩化ビニル管】

・耐腐食性に優れ、コストが安い
・屋外や床下など露出しない場所で使われる

【耐火二層管】

・硬質塩化ビニル管の外側に繊維モルタルを被覆した二層構造の管
・耐火性、耐食性、耐震性、遮音性に優れ、マンションやビルなどの排水管として広く使われている

【ポリエチレン管】

・柔軟性があり、耐久性が高い
・比較的新しい建物で使われている

【ステンレス銅管】

・耐食性・耐圧性に優れている
・高価格・長寿命

【銅管】

・熱伝導性が良く、温水系で使われることもある
・錆に強いが水質によっては腐食する

【塩ビ管】

・最も一般的でコストが安く加工しやすい

【銅管(亜鉛メッキ管、白ガス管)】

・高い耐圧性、耐久性がある

【鋳鉄管】

・古い建物で多い
・耐久性はあるが錆びやすい

2.地区年代別、管の素材と耐用年数

一般的に築30~40年のマンションは、鋼管の内部腐食・漏水が始まる時期にあたり、詰まり・腐食が発生するため更新時期にあたります。しかし使用されている管の種類により更新の時期が異なるため、注意が必要です。

※ご自身のマンションにどの種類の管が使われているかは、長期修繕計画書から確認できます。

築年数別よく使われている管の種類

築年代よく使われる管の種類
~1970年・銅管
・鋳鉄管
1980年代・硬質塩化ビニル管
・一部:架橋ポリエチレン管
1990年代・架橋ポリエチレン管
・塩ビ排水管
・耐火二層管
2000年代以降・架橋ポリエチレン管(ヘッダー配管)
・耐火VP排水管
・ステンレス管
・架橋ポリエチレン管+さや管
・樹脂系排水管(防音機能付き)
・ステンレスフレキシブル管(耐震性)

管の種類別耐用年数

種類耐用年数(目安)
亜鉛メッキ鋼管15~20年
塩ビ管(VP、VU)20~30年
鋳鉄管(排水)30~40年
耐火二層管30~40年
架橋ポリエチレン管40年程度
ステンレス管50年以上

3.給排水管の更新工事と更生工事

給排水管の「更新工事」とは、既存の配管を撤去し新規配管を設置する工事です。取替を行うため、劣化による漏水や詰まりなどのトラブルを解消できます。一方、費用が高額で工期も比較的長くかかるというデメリットがあります。このため、更新工事を実施できない管理組合が多くあると推測されます。

費用の問題などで給排水管更新工事を行えない場合、「更生工事」で対応するという選択肢があります。給排水管の「更生工事」とは、既存の配管は残し配管内を研磨・洗浄の上、特殊な樹脂で配管内をコーティングする工事です。

「更新工事」と比べ費用は安く、工期も短い傾向があります。しかし、耐久年数は短く、原則として「更生」は1回しかおこなうことができません。このため、「更新工事」実施までの延命処置といえます。 また、既存配管の劣化状況によっては採用できない場合もあり、注意が必要です。

4.まずは劣化調査から

マンションの給排水管の劣化調査には、様々な手法が用いられます。各調査方法で費用や調査できる内容が異なります。給排水管更新工事の必要性を検討するとき、まずは、劣化調査を行いどのような状態にあるのかを確認することから始めてください。

建物の築年数や管の材質、使用状況によって劣化の進行度合いが異なるため、劣化調査にも門的な知識が必要です。

5.更新工事いつするの?~ある組合の選択~

ある組合では給排水管の劣化調査をおこなった結果、管理会社から更新工事の実施が提案されました。長期修繕計画よりも10年近く前倒しの提案で、概算工事費も修繕計画を大幅に上回るものでした。

この組合は、組合の側に立って給排水管工事を提案してくれる「コンサルタント(設計事務所)」をコンペ実施の上で採用し、給排水管劣化調査を実施しました。診断結果から、工事個所の優先順位を決定し、時期、箇所、使用する配管の素材など、きめ細かく計画を立てました。工事事業者の選定にも相見積もりを取得し、組合主導で事業者を選定し、工事実施に至りました。コンサルタント費用は掛かったものの、工事全体の費用は圧縮できたのです。

・箇所ごとに工事の優先順位をつける
・対応方法(更新または更生)を選択
・使用する材料の決定
・工事事業者の選定(相見積もり)

更新・更生工事の範囲の費用負担については、▶コラム「給排水管の更新・更生工事」をご参照ください。

6.給排水管更新工事にも専門家の活用を

先に挙げた組合のように、給排水管の更新は優先順位をつけて取り掛かることが推奨されます。管の種別で使用される材質が異なるため、耐用年数も同じではありません。「いつ」「どこ」を「どのような方法」で更新するのか、専門家を採用し、組合財政も鑑みて決定することが求められます。


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いかがでしたか?
給排水管更新工事は大規模修繕工事と同等の費用を要することもある、大きな工事です。
大規模修繕工事に設計監理を採用するように、給排水管更新工事にも専門家を採用し組合主導で行うことが、これからのスタンダードになることでしょう。
マンション修繕なび では、給排水管更新のためのコンサルタントとのマッチングや工事の相見積もりの取得をお手伝いしています。初回無料相談や、無料セミナーをぜひご活用ください。

マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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