
2025.10.14
解説!改正区分所有法
2025年5月、区分所有法が改正されました。実に23年ぶりとなる今回の改正は、マンションの「管理」と「再生」の双方に大きな影響を及ぼす重要な内容です。
改正の主なポイントは次の2点です。
・マンションの管理を円滑に行うための改正
・マンションの再生を円滑に行うための改正
とくに「管理」に関する改正は、一般の管理組合にも直接関わる重要な内容となっています。
本記事では、この改正のうち 「マンションの管理を円滑に行うための改正」 に焦点をあて、そのポイントをわかりやすくご紹介します。
※改正区分所有法は2026年4月1日に施行(実際の運用開始)されます。
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23年ぶりの大改正!!そのポイントは?
区分所有法とは、マンション等区分所有建物の権利や管理・利用方法などの基本的なルールを定めた法律です。
「マンションの管理を円滑に行うための改正」のうち、特に管理組合運営に大きな影響を与える改正は、下記3点です。
①「議決権除外制度」の新設
これまでは、総会における議決権はすべての区分所有者に与えられていました。
しかし今回の改正により、所在不明や連絡が取れない所有者がいる場合、裁判所に申立て(非訟事件手続※)を行うことで、その所有者の議決権を除外できるようになりました。
これにより、所在不明の区分所有者等を多く抱える管理組合でも、総会議案が可決しやすくなり、組合運営が円滑に進むことが期待されます。
※非訟事件手続:通常の訴訟手続きを経ずに、裁判所が関与して解決を図る手続き

②出席者多数決制度の導入
これまでは、多くの決議に区分所有者数および議決権総数の一定割合の賛成が必要でした。
改正後は、総会に出席した人(委任状・書面による議決権行使を含む)を基準とした多数決で決議できるようになります。
具体的には、これまで区分所有者および議決権総数の 4分の3以上の賛成が必要だった下記②~⑥の決議が、出席者を分母とした 3分の2または 4分の3以上の賛成※1で可決できるようになりました。
また、下記①の普通決議に至っては、これまで必要だった「議決定足数ルール※2」が除外され、出席者の過半数の賛成で決議できる仕組みに改められました。
このように、「出席者多数決制度」は、総会に出席しない所有者(委任状提出や書面による議決権行使もしない人)は、決議の分母に含めない仕組みです。
決議 | 現行の可決数 | 改正後の可決数 |
---|---|---|
①普通決議 | 区分所有者等※1の過半数 | 出席者とその議決権の過半数 |
②共用部分の変更 (著しい変更を伴わない) | 区分所有者等※1の3/4以上 | 出席者とその議決権の3/4以上※2 |
③復旧決議(小規模) | 区分所有者等※1の3/4以上 | 出席者とその議決権の3/4以上※2 |
④規約の設定・変更・廃止 | 区分所有者等※1の3/4以上 | 出席者とその議決権の3/4以上※2 |
⑤管理組合法人の設立・解散 | 区分所有者等※1の3/4以上 | 出席者とその議決権の3/4以上※2 |
⑥義務違反者に対する使用禁止等 | 区分所有者等※1の3/4以上 | 出席者とその議決権の3/4以上※2 |
※2 決議成立のためには、区分所有者および議決権の過半数を有するものの出席が必要(=議決定足数ルール)

③専有部分・共用部分の「財産管理制度」の新設
所有者が不明であったり、適切に管理されていない専有部分や共用部分について、裁判所が管理人を選任し、適切に管理できる制度が新たに設けられました。
新設された制度は次の3つです。
・所有者不明専有部分管理制度
・管理不全専有部分管理制度
・管理不全共用部分管理制度
この制度により、利害関係人の請求によって裁判所が管理人を選任し、必要な権限を与えることで、専有部分や共用部分の問題解決を進められるようになります。
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改正の背景と注目点
今回の区分所有法改正の背景には、マンションの建物管理や組合運営が年々複雑化する中で、総会での合意形成が難しくなり、適正な管理が阻害されている現状があります。
なかでも注目すべき改正点は、総会に参加しない組合員を、議案成立に必要な定数の分母から除外できるようになったことです。これにより、賛成数が足りずに議案を可決できなかった組合でも、議案が成立しやすくなります。
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区分所有法改正から見る、管理組合の今後
今回の改正により、管理組合にとっては議案可決のハードルが下がった一方で、総会に参加しない組合員の意思が反映されにくい仕組みへと変わりました。今後も円滑な管理を推進するために、可決要件を緩和する方向で法改正が進むと予想されます。
マンション管理は本来、組合員の総意によって行われることが望ましいとされています。この先、管理組合は組合員に対して、総会や理事会などへ積極的に参加し権利を行使するよう働きかけを行うことが、一層必要になるでしょう。
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いかがでしたか?
23年ぶりに大改正された区分所有法の”マンションの管理を円滑に行うための改正”のポイントをご説明しました。
この改正内容を組合の皆さんと共有し、組合運営にお役立てください。
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マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)
国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com
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