マンション修繕なびコラム 日本とどう違う? ドイツのマンション管理事情

2024.5.31

日本とどう違う? ドイツのマンション管理事情

コラムの読者より「マンション管理について諸外国の状況を知りたい」とリクエストを頂いたので、法務省が公表した「老朽化した区分所有建物の建替え等に関する諸外国の区分所有法制及びその運用状況等に関する調査研究報告書」を読んでみました。興味深い内容でしたので、今回、調査対象国の一つであるドイツに関する報告について、その一部を皆さんと共有したいと思います。

1.ドイツには数十年で
建物を取り壊すなどのような想定がない!

ドイツにおいて分譲マンションは、老朽化したとしても修繕工事等を通じ半永続的に維持していくものとされ、経年を原因とする解体や建替えは制度自体が存在しません。例外として、大規模な損傷などした場合の再建等については制度化されているそうです。どちらにせよ、ドイツでは地震による損傷が極めてまれであり、マンションの建替え等の実績は皆無に等しいと報告されています。

インタビューに答えたドイツのルティン・ホイブライン教授(インスブルック大学法学部教授)(当時)は次のように語っています。
「使用期間を30年ないし40年と考えて所有権を取得している建物の例を知らない。このような事態は、ドイツの不動産市場においても考え難いものである。」
「ドイツの「不動産文化」は、建物の寿命を100年もしくはそれ以上と捉えており、より短いインターバルで建替えや解消を行うものではないと考えている。」

建物の寿命を100年以上とする考え方は、ドイツの法制度における「区分所有建物の半永続的維持・管理の原則」の根底にあり、ドイツのマンション所有者の一般的な意識でもあると報告されています。

2.日本ではマンション耐用年数が想定されている

一方、日本ではマンションの耐用年数が話題になります。例えば使用開始から50年とか、しっかり管理していれば80年は使える、などです。つまり、マンションの耐用年数は数十年であるという考え方が一般的です。

国土交通省でも、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」で“円滑な建替え事業等に向けた環境整備”が議論されており、老朽化すれば建替えるという前提で検討が進んでいます。

3.マンションが“使い捨て”でよいのか?

自然災害が少なく古い建物を長く利用することが可能なドイツと、木造建築の歴史が長く火事や地震などの被害を受け建替えを繰り返してきた日本とでは、建物に対する考え方も根本的に異なるのだと非常に驚きました。とはいえ、日本の区分所有建物も、もはや木造ではありません。コンクリート製の大規模な構造物です。これまでの考え方が妥当か検討する時期に来ているかもしれません。

日本でも震災等によるものを除いたマンションの建て替え実績は累計で282件(2023年3月時点)のみです。実は、建て替えは進んでいないのです。

マンションを可能な限り長く維持・管理し、使用し続けるために、質の良い建物の建築と共に、計画的でコストを抑えた修繕の実施が必要不可欠でしょう。

*参考資料:「老朽化した区分所有建物の建替え等に関する諸外国の区分所有法制及びその運用状況等に関する調査研究報告書」平成25年3月 公益社団法人 商事法務研究会

いかがでしたか?
皆さんのマンションも100年以上の使用を可能にするための維持管理に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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