
2025.9.22
大規模修繕工事における住民説明会の重要性~計画段階から着工前までの「対話型プロセス」のつくり方~
マンションの大規模修繕工事では、技術的な適切さだけでなく、居住者との合意形成と信頼構築が成功のカギを握ります。特に計画から着工前までの「初期説明会」は、住民の理解と納得を深め、総会での承認獲得につなげる役割も果たします。
今回は、修繕工事における説明会をタイミング別に整理し、それぞれの目的と効果について解説します。
1.事前検討段階の説明会:まずは”知ってもらう”ことから
修繕計画の検討が始まる初期段階では、居住者の疑問や不安を取り除くことが重要です。この段階での説明会では、以下の内容を共有することが効果的です。
・建物診断の結果や劣化状況の報告
・修繕積立金の現状と修繕費の想定
・今後のスケジュールや検討方針の概要
これにより、住民の関心と当事者意識を高め、管理組合との信頼関係の礎が築かれます。

2.工事内容・業者選定段階の説明会:承認獲得に向けた”合意形成の場”
このタイミングの説明会は、単に情報提供するだけでなく、その後に予定される総会で承認を得るための「最終準備の場」として非常に重要です。
説明すべきポイントは以下のとおりです。
・工事の範囲と施工方法(外壁材・防水仕様など)
・施工会社の選定方法(見積比較、技術力、実績)
・修繕費の内訳と資金調達計画(積立金の充当、借入案など)
ここで住民の疑問を丁寧に受け止め、納得感のある説明を行うことで、総会における承認率が高まり、不要な議論や反対のリスクを軽減できます。逆に、この場で十分な説明がなければ、総会での議論が紛糾し、修繕計画そのものの遅延を招きかねません。

3.工事直前(着工前)の説明会:生活への影響を丁寧に共有
工事開始を目前に控えた段階では、居住者の暮らしに直接関わる情報の共有が求められます。
主な説明項目は以下の通りです。
・工事スケジュールと進行体制
・足場設置・騒音・通行規制など、生活への影響
・洗濯物制限・安全対策・緊急時の対応ルール
これらを具体的に伝えることで、住民の不安や不満を事前に緩和し、協力体制を築くことができます。現場責任者の紹介や質疑応答の時間も、信頼関係を強化する上で効果的です。
なお、着工前の説明会は施工会社が主導し、住民向けに行うことが一般的です。

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いかがでしたか。
大規模修繕の住民説明会は、それぞれに異なる目的と効果があります。
特に工事内容・業者選定段階の説明会は、総会での承認を得るための最終ステップとして、住民との対話と透明性の姿勢が不可欠です。
しかしながら、輪番制の役員だけでは説明会の進め方や技術的な質問への回答などが難しいケースも少なくありません。管理会社を頼ることも一つですが、外部の専門家に相談することも有効な手段の一つです。
信頼は一度に築かれるものではありません。段階的な説明と対話の積み重ねこそが、修繕工事の円滑な実施とマンションの資産価値向上につながるでしょう。
マンション修繕なびでは、設計事務所やマンション管理士の紹介も行っています。説明会の開催方法や内容など、疑問をお持ちの方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。

黒木 淳
(マンション管理士)
大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。
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