
2025.6.12
大規模修繕工事の進め方~設計監理方式と責任施工方式~
多くの組合員にとって、大規模修繕は何度も経験することではありません。大規模修繕の検討って何から始めれば良いの?と思われる方も多いと思います。
今回は、大規模修繕の検討を始めて最初に決定すべき内容である、「発注方式」について注意すべきポイントも含めて解説します。
大規模修繕工事を進める際には、主な発注方式として「設計監理方式」と「責任施工方式」があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。工事の進行管理や品質確保のために、適切な発注方式を選択することが重要です。
1.設計監理方式
設計監理方式では、管理組合が設計事務所やコンサルタントに設計と工事監理を依頼し、その設計をもとに、施工会社を選定して工事を進める方式です。
1-1.設計監理方式の流れ
①調査・診断
建物の劣化状況を詳しく調査し、修繕が必要な箇所や工事の規模を把握します。
②設計
調査結果に基づき修繕計画を策定し、具体的な設計図や仕様書を作成します。
③施工業者の選定
設計事務所の監督のもと、複数の施工業者から見積を取得し、業者を選定します。
④工事の実施
設計図に基づいて施工が行われ、設計監理者が定期的に工事の進行状況を確認し、品質管理を行います。
⑤完成検査・引き渡し
工事完了後、設計事務所が最終検査を行い、問題がなければ引き渡しとなります。
1-2.設計監理方式のメリット、デメリット
メリット
専門的な知見の活用:設計者の知識を活かし、建物の状態や修繕内容に合わせた最適な計画を立てられる。
品質管理の強化:設計事務所が工事を監理することで、施工の品質が担保されやすい。
透明性の確保:施工業者選定の際に複数の業者から見積を取得でき、適正価格での発注が可能。
デメリット
コスト高:設計・監理の費用が発生し、総工費が高くなる場合がある。
工期の長期化:設計・監理のプロセスを経るため、工事の開始までに時間を要する。
1-3.設計監理方式を選ぶ場合の注意点
設計監理方式は透明性が高い方式であるといわれている一方、マンション業界においては、談合の疑いがある工事が複数確認されています。設計会社と施工会社が事前に取り決めをし、結果として管理組合にとって不利益となる工事が行われることもあります。
このような談合を防ぐためにも、設計管理方式を採用した場合であっても、設計事務所に施工会社の選定を任せきりにせず、管理組合自身で施工会社選定に携わることが必要です。
2.責任施工方式
責任施工方式では、管理組合が施工会社に直接依頼し、設計・施工・監理を一括で任せる方式です。この施工会社は、管理会社や管理会社から紹介される施工会社となるケースもあります。
2-1.責任施工方式の流れ
①事前調査
施工会社が建物の劣化状況を調査し、必要な修繕内容を判断します。
②修繕計画の提案
調査結果をもとに、施工会社が修繕計画を立案し、管理組合に提案します。
③工事契約の締結
管理組合が施工会社の提案に同意した後、契約を結びます。
④工事の実施
施工会社が計画に基づき修繕工事を進めます。施工監理も管理組合で行います。⑤完成検査・引き渡し
修繕工事完了後、施工会社が最終検査を行い、管理組合に引き渡します。
2-2.責任施工方式のメリット、デメリット
メリット
コスト削減:設計監理の費用を削減できるため、総工費を抑えられる可能性がある。
スムーズな進行:設計から施工までを一貫して行うため、工期が短縮される。
デメリット
品質管理の不安:施工業者が設計・施工を兼務するため、品質確保の仕組みが弱くなる可能性がある。
透明性の確保が難しい:施工業者の見積が適正価格かどうか判断しにくい場合がある。
2-3.責任施工方式を選ぶ場合の注意点
責任施工方式は、施工会社が設計から施工まで一貫して行うため、管理組合自身がチェック者として工事を監理する役割を担う必要があります。事業者任せにしてしまうと、不要な工事や割高な工事を発注してしまうリスクもあるので、設計監理方式以上に、管理組合自身で工事内容を詳しく精査する必要があります。

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いかがでしたか。
大規模修繕工事の発注方式は、建物の特性や管理組合の方針、予算に応じて慎重に選択する必要があります。いずれの方式を採用する場合も、信頼できる業者を選定することが重要です。
マンション修繕なびでは、実績のある事業者へ相見積を依頼することができるので、適正な競争を経た提案を受けることが可能となります。
また、設計事務所やマンション管理士等の専門家への相談も可能となりますので、大規模修繕の進め方に疑問や不安がある方はぜひご活用ください。

黒木 淳
(マンション管理士)
大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。
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