マンション修繕なびコラム 大規模修繕工事の費用と資金計画の立て方

2025.5.22

大規模修繕工事の費用と資金計画の立て方

さぁ、大規模修繕。修繕積立金は足りていますか?

早速ですが、皆さんのマンションでは、次の大規模修繕に向けて計画的に修繕積立金は積み立てられていますか。
国交省が公表する令和5年度マンション総合調査を見ると、計画上の修繕積立金の積立額に比べて、現在の積立額が不足しているマンションが36.6%となっており、管理組合の財政難がうかがえます。
参考:令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)

大規模修繕は築12~15年程度ごとに行われることが多いですが、いざ大規模修繕を実施しようとしても積立金が足りず実施できないという事例もあります。 今回は、大規模修繕の費用や資金計画について解説します。


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1.大規模修繕の費用

(1)費用の目安
令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査では、1戸あたりの工事金額は100万円~125万円の割合が高くなっています。つまり、50戸のマンションであれば、5000万円~6250万円、100戸のマンションであれば1億円~1億2500万円程度が一つの目安となるでしょう。※なお、工事金額に共通仮設費は含んでおりません。
ただし、マンションの規模や敷地および建物の形状、共用設備の有無により費用も変動することに注意が必要です。さらに、ここ数年の物価上昇は建設業界にも大きく影響しており、今後も修繕費が高くなっていくことは容易に想像できます。

(2)工事内訳と工事金額
総工事金額に対する割合を見てみると、外壁工事や防水工事などの建築系工事が約60%、足場の設置などの仮設工事が約25%、諸経費・その他で約15%となっています。
また、建築系工事の内訳では、外壁塗装工事が約25%、次いで床防水工事が約20%となっています。
参考:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

2.資金計画

上記のとおり、大規模修繕を実施するには1戸あたり100万円以上の工事費が必要となることが多く、これを一時期に全区分所有者から徴収することは困難です。そのために、修繕積立金として積み立てておくことが一般的です。
毎月の積立額は、長期修繕計画をもとに将来的に必要となる修繕費用の総額を想定し、検討することが必要です。

3.不足時の対応方法

上記のとおり、大規模修繕を実施するには1戸あたり100万円以上の工事費が必要となることが多く、これを一時期に全区分所有者から徴収することは困難です。そのために、修繕積立金として積み立てておくことが一般的です。
毎月の積立額は、長期修繕計画をもとに将来的に必要となる修繕費用の総額を想定し、検討することが必要です。

(1)一時金として徴収
不足する金額を、組合員から臨時で徴収する方法です。積立金と同様に所有する住戸の床面積で按分し、負担することになります。不足する額によっては数十万円~百万円以上の一時金が必要となるケースもあり、組合員にとって負担の大きな方法となります。

(2)金融機関からの借り入れ
金融機関から不足額を借り入れる方法です。組合員の一時的な負担は特にありませんが、借入に際しては金利が発生するため、支払総額が増えるデメリットがあります。また、借入の条件として、積立金の値上げが必要なケースもあります。

(3)修繕を先延ばしにする
計画している修繕を先延ばしにする方法です。積立金が貯まるまで工事の実施時期を遅らせることで、組合員の負担はそのままで工事を実施することができます。必要な修繕が遅れることで、二次的な不具合や緊急で必要な修繕が発生するリスクなどがあり、結果として余計な修繕費が発生する可能性があることに注意が必要です。


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大規模修繕は、実施する時だけでなく長期的な計画が必要となり、住民全員で取り組むべき重要なイベントです。
普段から修繕計画を定期的に見直し、気になる点や専門的な知識については専門家に相談してみましょう。
マンション修繕なびでは、マンション管理士などの専門家の紹介も行っていますので、ぜひ活用ください。

黒木 淳
(マンション管理士)

大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。

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