
2025.6.20
大規模修繕工事におけるコンサルタントの役割と選び方
マンションの大規模修繕工事の進め方には、大きく「設計監理方式」と「責任施工方式」があることを過去のコラムで紹介しました。
今回は、「設計管理方式」での大規模修繕において重要な、コンサルタントの役割と選び方について解説します。
大規模修繕の進め方についてはこちらのコラムで解説しています。
▶『大規模修繕工事の進め方~背系管理方式と責任施工方式~』
1.コンサルタントの役割
大規模修繕工事におけるコンサルタントは、修繕工事をスムーズに進めるための専門家で、一級建築士事務所、大規模修繕専門のコンサルタント事務所のほか、管理会社がコンサルタントとして関わることもあります。
コンサルタントの主な役割としては以下が挙げられます。
・劣化診断の実施
建物の現状を把握し、修繕の必要性を明確にする。
・工事計画の策定
適切な修繕工事の範囲や優先順位を決定。
・施工会社の選定支援
公平な視点で業者を選び、見積の妥当性を判断。
・工事監理
施工品質のチェックやトラブル対応。
・管理組合のサポート
修繕計画の説明や合意形成の支援
2.コンサルタントの選び方
適切なコンサルタントを選ぶために、以下のポイントを押さえましょう。
・実績の確認
過去のプロジェクトや実績を確認し、信頼できる専門家かどうかを見極めます。また、同一のマンションでリピートされるような実績があればなおよいでしょう。
・対応力・コミュニケーション能力
管理組合の疑問や不安に丁寧に対応してくれるか、わかりやすく説明できるかも重要な要素です。管理組合のスタンスを理解し、管理組合の要望をくみ取った大規模修繕を実施するためには、コンサルタントと適切なコミュニケーションが取れるかどうかが重要となってきます。
・費用とサービス内容のバランス
一般的には大規模修繕工事費の3%~10%となるケースが多いですが、依頼する内容によって費用は増減します。報酬体系やサービス範囲を明確にし、コストに見合う価値があるかを判断しましょう。
・公平・中立性の確保
施工会社との関係が偏っていないかチェックし、第三者としての立場でアドバイスができるか確認しましょう。不適切コンサルタントとして、以下のような事例も国交省から公表されています。
・不適切コンサルタントの例
①施工会社の社員がコンサルタント会社に出向するなどし、施工会社が自社に決定するよう誘導するケース
コンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントではなく、施工会社の社員であった。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送り。
②設計会社と施工会社が事前につながっており、公平な選定がされないケース
設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう操作し、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚。管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務を辞退。
③コンサルタントが施工会社からバックマージンを受け取っているケース
コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導。
参考:設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の 相談窓口の周知について(通知)
3.コンサルタントを活用する際の注意点
・管理組合とコンサルタントの認識を一致させる
管理組合の優先したい事項とコンサルタントの考える優先すべき事項が必ずしも一致するわけではありません。管理組合の要望を踏まえ、専門家としてより良い提案がなされるよう、認識を一致させたコンサルタントの選定が重要です。
・契約内容を事前に十分確認し、トラブルを防ぐ
上述したコンサルタントの役割が一般的なコンサルティング業務となりますが、契約内容によっては業務外となることも考えられます。
何を依頼し、どういったサポートがうけられるのかを事前に確認する必要があります。

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いかがでしたか。
コンサルタントは、大規模修繕が成功するかどうかを左右する重要な存在です。適切なコンサルタントを選び、計画的な修繕を進めることで、大規模修繕がスムーズに進み、マンションの維持にもつながります。
逆に言えば、不適切なコンサルタントを選んでしまうと、高額な工事費などの経済的な損失や、工事の不備などによる資産価値の低減も起きかねません。
マンション修繕なびでは、設計管理方式におけるコンサルタントの相見積サービスも行っております。ぜひご活用ください。

黒木 淳
(マンション管理士)
大手マンション管理会社にてフロント担当者として勤務。
その後、独立系管理会社にてフロント業務のほか、管理組合支援業務として第三者管理業務、顧問業務を行う。
現在は、マンション管理の専門家として、管理組合が管理会社と対等な関係が築けるようサポートを行っている。
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