マンション修繕なびコラム 大規模修繕のトラブルとは?事例と気を付けたいポイントを解説

2026.1.5

大規模修繕のトラブルとは?事例と気を付けたいポイントを解説

マンションの大規模修繕工事は、大がかりな工事を住民が居住する状態で、何ヶ月も続けるため、徹底的なトラブルの想定や対策が肝心です。

また、各区分所有者の資産価値を左右する大切な工事であり、建築や設備などの専門的な知識を必要とする場面もたくさんあります。

本記事では、修繕工事の準備期間から施工後までの3つの段階で発生するトラブル事例を解説し、トラブルの回避のポイントや対処法をご紹介します。

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1.大規模修繕のトラブルとは

大規模修繕は多くの関係者と多額のお金が関わるため、トラブルが起きやすく複雑化しやすいといえます。

代表的なトラブルとして、以下の6つが挙げられます。

 ・施工会社・コンサルタントなど関連会社との関係が悪化してしまう
 ・工事の弊害(遅延、騒音、振動、臭気、落下物)
 ・クレーム対応(居住者・近隣住民)
 ・生活への支障(視線、洗濯、空き巣)
 ・修繕費用が予定を超過してしまう
 ・施工不良や瑕疵担保責任

また、トラブルの発生は以下の3つの時点に分けられます。

 ・大規模修繕の準備期間に発生するトラブル
 ・大規模修繕の施工期間に発生するトラブル
 ・大規模修繕の施工後に発生するトラブル

大規模修繕ではどのようなトラブルが起きやすいのか、またその原因や回避策を把握しておけば、トラブルを予防し被害を最小限に抑えられるでしょう。

2.大規模修繕の準備期間に発生するトラブル

大規模修繕の準備期間に発生するおもなトラブルは、以下の3つです。

 ・修繕費用の不足
 ・想定工数よりも割高な請求
 ・管理組合(修繕委員会)が機能しない

【修繕費用の不足】

大規模修繕の工事費用が現在準備できている修繕積立金だけで賄えない場合があります。
修繕費用が不足する背景には、以下のような理由があります。

  • 物価高の影響で、工事で使用する建材や消耗品などの素材調達コストや人件費などが高騰している
  • エレベーターや消防設備、給排水管などの更新工事で、設備機器自体の価格が想定外に高騰している
  • 当初の修繕積立金の設定が低く、長期修繕計画に対して修繕積立金の貯留スピードが追いついていない
  • 長期修繕計画にある工事内容の見立てや計画、予算化が甘く、多くの工事費用が想定を超える可能性が高い

分譲マンションで定期的に大規模な修繕工事を行う場合は多額の工事費用がかかるため、毎月区分所有者から修繕積立金を集めて積み立て、将来の多額の工事費用に充てます。

しかし、長期修繕計画や工事見積もりの精度が低かったため想定したよりも多くの工事が必要だったり、修繕積立金の滞納が慢性化したり、建物や設備の劣化スピードが早い場合には、修繕費用が足りなくなる可能性もあるでしょう。

修繕費用が修繕積立金で賄えない場合は、
・不足分を金融機関から借り入れる
・区分所有者から一時金を納めてもらう
・修繕工事を延期したり、長期修繕計画を見直す
などの解決策があります。

【割高な請求】

前提条件や想定が甘かったために追加工事が発生するといった見積もりの精度が低い場合や、相見積もりや金額精査をしないなど、見積もりの取り方が悪い場合に、工事金額が高くなります。

また、工事着工前の要件定義の時点で、施工会社や管理会社および修繕委員会との間で生じた認識のズレが金額の乖離に影響するような場合が考えられます。

【修繕委員会が機能しない】

大規模修繕工事を行う多くの場合には、管理組合の理事会とは別の集団として、大規模修繕を主導する「修繕委員会」を組織します。

構成員は区分所有者から選ばれますが、委員会の人数や人選が適切でない場合には、運営が上手くいかなかったりトラブルに繋がったりする場合があります。

区分所有者の多くは日々の生活が忙しく、興味がないので委員をしたくないなど、委員会を運営する人を集めるのがむずかしいことがよくあります。

また、大規模修繕の方針が区分所有者同士でなかなか合意しないことや、理事会とうまくコミュニケーションが取れないという場合もあります。

専門性がある方の参加がなく、経験や、知識が区分所有者側に不足していて、内容の理解や適切な決断がしづらいことも機能不全の要因といえるでしょう。

そのため、スケジュール通り適切に修繕工事を進めていくためには、修繕委員会をサポートするコンサルティング会社をつけておくのが安心です。

3.大規模修繕の施工期間に発生するトラブル

大規模修繕の施工期間に発生するおもなトラブルは、以下の6つです。

 ・工期の遅延
 ・施工会社との関係悪化
 ・施工会社の倒産
 ・居住者からのクレーム
 ・近隣住民からのクレーム
 ・空き巣被害

【工期の遅延】

工事期間の遅れとは、着工日を過ぎても修繕工事がはじまらない、もしくは工事完了日までに終わらないなどです。

天候などで数日の遅れが出る場合はよくありますが、パンデミックや地域紛争、為替レートや物価高騰など、国際情勢によって人材や資材の調達が遅れてしまうこともあります。
また、工事の途中で判明した事態により、工法や仕様の変更、追加工事を余儀なくされることもあるでしょう。

工期遅延の対策や予防策としては、事業者が示した施工スケジュールに実現性があるかどうかを判断するために、ロードマップ(作業工程表)の有無(出てこない場合は要注意)や内容(実現性)のチェックが大切です。

また、工事の契約形態は、成果高(仕事の完了に対して報酬を支払う)の請負契約なので、支払回数やタイミングおよび金額などを実体に即した設定にすべきでしょう。

例えば、手付金~竣工までに少なくとも3~5回の支払いタイミングを設けるのが一般的です。

また、竣工完了後の支払いタイミングは工事内容と現状が合致するのかの確認や追加施工などのアフターフォロー期間を考えて、工事完了の2ヶ月後くらいにする方法もあります。

このように、支払い工期を施工会社のおまかせにするのではなく、修繕委員会がチェックや現場確認をするなど、進んで参加するようにしましょう。

【施工会社との関係悪化】

修繕委員会と管理会社や施工会社とで仕上がりに対する認識や意見の相違があり、工事完了や仕上がりの判断をめぐって対立するケースがあります。

区分所有者が思っていることと施工会社や管理会社が認識している業界の一般論にはズレがあるものです。

そのため、修繕委員会が普通だと思う期間や金額などの要求が、施工会社や管理会社にとって困難なスケジュールや期間になってしまう場合があるのです。

施工会社が難しい要望をクリアしたために工事金額が高くなり、区分所有者と施工会社とで金額の認識違いによるトラブルになる可能性もあります。

そのようなトラブルがないように、専門家(コンサルティング会社、マンション管理士、建築士、弁護士など)が介在して仲を取り持ったほうが、折衝がスムーズに進むともいえます。

【施工会社の倒産】

修繕工事の施工期間中に施工会社が倒産して、工事がストップするケースがまれにあります。

そのような場合は、工事を引き継ぐ新たな施工会社を探さなければならず、完了までの期間も費用もさらにかかるのは避けられません。

施工会社が存続し続けることは、工事後のアフターフォローや品質保証そのものであり、支払った工事費用に対して最大限のサービスが受けられるという安心感でもあるのです。

ただし、施工会社が将来倒産するかどうかを事前に、確実に把握することは困難です。
したがって、相見積もりで複数の候補業者から選定する際に、事前の与信調査や保険の加入状況(団体に入っているか)などを調査して、倒産のリスク予防やリスクヘッジをしましょう。

【居住者・近隣住民からのクレーム】

工事期間中は、騒音や振動、臭気、粉塵、汚損、施工業者の振舞いなどに関して、居住者や近隣住民からのクレームが起こりやすくなります。

工事規模から考えれば原因が数日で収まらないとは想像に易いものの、配慮を怠ればすぐにクレームに発展してしまうでしょう。

大規模修繕工事で居住者からよくあるクレームとして、以下の事例があります。

 ・騒音、振動、騒音、臭気、粉塵、汚損
 ・部屋の中へ向けられた作業員の視線
 ・足場から侵入する不審者や空き巣被害
 ・洗濯物の汚れや外に干せない不便さ
 ・ベランダに置いた荷物を部屋内へ格納

対策としては、クレーム相談窓口を設立したうえで、適切な運営を行うことです。体裁よく窓口だけ作っても、運営が疎かであればクレーム対策として機能しません。

また、施工会社の現場代理人の対応経験値を事前にきいておいて、適切で効果的なクレーム対応ができる人物かを確認する必要があります。

修繕委員会や、理事会が施工会社とうまく連携できていなければ、居住者への満足な説明会がなく、近隣住民や近隣マンションに対して、挨拶や事前通知がなされないかもしれません。
事前通知や説明は、適切なタイミングや範囲で周知ができるように、施工会社とうまく連携を取りましょう。

【空き巣の被害】

大規模修繕工事ではマンションの周囲に足場を設置して、養生メッシュシートが周囲からの視線を遮ります。

オートロックやエレベーターを使わずに館内へ侵入できて、外から発見されづらい幕が掛かった状況であるため、空き巣による被害が発生する場合があります。

セキュリティ対策には、足場階段入口の施錠や人感センサーライト、防犯カメラ、警告看板などを設置したり、施工作業員だと分かる服装や腕章を徹底したりなど、不審者や窃盗犯が侵入しづらい状況を整える方法があります。

修繕専門の業者はセキュリティ対策の見積もりが甘い場合があるため、セキュリティ対策を施工会社がどこまで実施してくれるのか、事前に慎重に確認しましょう。

4.大規模修繕の施工後に発生するトラブル

大規模修繕の施工後に発生するトラブルは、以下の2つです。

 ・施工不良
 ・施工費用の追加請求

【施工不良】

大規模修繕工事の竣工後に修繕箇所の不具合を発見したり破損したりといった、施工不良トラブルが起きる可能性があります。

質の低い施工会社もしくは下請け会社は、工事の失敗や工期の遅延などを起こす確率が高いため、施工会社の選定は重要な決断といえるでしょう。

施工会社を選ぶ際は、アフター定期点検や長期品質保証、瑕疵担保保険加入などを備えた、工事後も長く安心感を提供してくれる施工会社を選定するようにしましょう

【施工費用の追加請求】

工事前に行う専門家による建物診断でも見つけられない場合や、工事がはじまってから見つかる劣化、修繕内容があります。

マンションの保全や危険回避の観点から劣化箇所の発見は幸いであり、最優先で対処すべき箇所もあるため、工事の予算は予備費を含んだ金額で設定しておくとよいでしょう。

一方で、不要な工事を事後報告で施工する業者もあるため、報告を受けて緊急でも重要でもない場合は、(それでも要求してくる場合は)毅然と支払いを拒む態度が必要です。

勝手に施工されないためにも、定例会等で事前報告を行うよう施工会社へ依頼しておくことや、追加工事をする場合は修繕委員会の承認が必要とする条項を請負契約書に追加するとよいでしょう。

5.大規模修繕のトラブルを避けるためのポイント

大規模修繕のトラブルを避けるなら、以下の5つのポイントに注目しましょう。

 ・修繕計画の見直し
 ・施工の滞留や施工不良のリスクヘッジの徹底
 ・信頼のおける施工会社への依頼
 ・住民への丁寧な説明
 ・空き巣などのセキュリティ対策

【修繕計画の見直し】

大規模修繕はマンションごとの長期修繕計画に沿って行いますが、計画内容は約5年間隔で見直します。

劣化状況や時代のニーズ、物価、社会情勢などを考慮して計画を見直し、資金に不足がない場合は修繕積立金の増額や一時金での徴収も予定しましょう。

【瑕疵(かし)保険加入業者への依頼】

修繕工事に欠陥があれば、施工会社(倒産している場合は発注者)に振り込まれる保険金で補修工事ができる、瑕疵保険に加入していることを大前提としましょう。

瑕疵保険は、第三者の建築士が施工前と施工後にチェックを行うため、工事の不備を防ぐだけでなく施工会社の緊張感を高めてくれます。

【信頼のおける施工会社への発注依頼】

大規模修繕工事を成功させるには、質の高い施工会社へ発注することです。

質の高い施工会社とは、大規模修繕工事の実績が多く、担当者の知識や経験が豊富で、信頼できる管理会社やコンサルティング会社から紹介された会社です。

また、セカンドオピニオンとして、コーポレートサイトや決算報告の内容(経営体質)、ネットの口コミなども参考にするとよいでしょう。

【住民への丁寧な説明】

大規模修繕工事は一般的に10〜15年周期であるため、全ての区分所有者が経験済みとは限りません。

そのため、施工内容と合わせて緊急度や資産価値向上への寄与など、住民へは時間をかけて丁寧な説明を行う必要があります。

また、工事の弊害(騒音、振動、粉塵、臭気、目線、空き巣、期間延長、洗濯の制限など)も周知し、影響を和らげるための自己努力を促すことも必要です。

【セキュリティ対策】

空き巣被害では、窓のクレセント錠を破られて侵入されないような補助錠や、視線が届かないカーテン目隠しなどの対策をするよう促しましょう。

そのほかにも、作業者の服装の周知や、声かけ挨拶の徹底、館内の巡回など、防犯意識の醸成も大切な予防策になるでしょう。

6.大規模修繕のトラブルが発生したら

大規模修繕のトラブルは、まず管理会社へ報告や相談をして、自らも時系列で詳細な経緯を記録し、原因および責任の所在が明確になるよう努めましょう。

施工トラブルなら修繕して回復させることに尽きますが、契約内容や業界ルール、商品ごとの保証期間、保険適用などの問題を解決するには専門的な知識を用いなくてはなりません。

しかし、独学で学んで対処しようにも、コンサルティング会社やマンション管理士などの専門家と比べれば、時間も知識も経験も充分とはいえないでしょう。

はじめから専門家をサポート役につけて、確実で適切な判断が最短距離で行える環境作りを目指しましょう。

7.大規模修繕のトラブルを把握して防止しよう

大規模修繕のトラブル回避は、施工会社の選定を失敗しないことですが、トラブルを確実に100%回避することはできません。

しかし、万一の際でもトラブルの影響や損害を最小限に抑えるために、リスクを想定して事前準備や対策ができていれば安心です。

また、長期間の工事をスムーズに進めるに、居住者や近隣住民との相互理解と協力要請が不可欠であるため、事情やリスクの説明は丁寧に行うことが大切です


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いかがでしたか?
どの場面でも、大なり小なりトラブルはつきものです。。
どのようなトラブルがあるのかは、事前にチェックをしておいて、備えることはとても大切ですね。
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