マンション修繕なびコラム 大規模修繕工事の新材料・新工法と事業者選び

2025.9.22

大規模修繕工事の新材料・新工法と事業者選び

一般的にマンションの大規模修繕工事とは、建物および設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持・回復させるための修繕工事を指します。

しかし、マンション新築時の数十年前と同等水準に回復させるだけでよいのでしょうか。時代とともに技術も材料も進化しています。必要に応じて、区分所有者の要望を反映し、建物及び設備の機能を向上させる改良工事の実施も、求められています。

この記事では、大規模修繕工事に新しい建材や工法を採用するメリット、適正な工事事業者選定の方法についてご説明します。

本記事は、マンション修繕なびセミナー「常識外の視点で考える、修繕工事の新しい材料と業者選び」(講師:ヤドリギ建築設計舎 代表 吉田 秀栄氏)、を元に作成しています。
▶動画はこちらをご覧ください「修繕工事の新材料と業者選び方」

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1.マンションの大規模修繕工事、元の状態に戻すだけでよいのか

セミナー講師である吉田氏が初めてマンションの修繕に関わったのは、あるマンション管理士から設計監理を依頼されたことがきっかけでした。そのとき管理士から、「マンションの大規模修繕工事は、新築時と同等水準に回復させる工事なので、余計なことはしなくてよい。」と、言われたことに違和感を持ったそうです。

「建築材料や技術は進歩しているのに、なぜ昔と同じ状態に戻すだけでいいのか?」

こうした問題意識から、吉田氏は “修繕専門ではない建築士”という立場だからこそ可能な、「既成概念にとらわれない提案」を行うようになったと、いいます。

大規模修繕工事については、
▶コラム「コンサルタントの重要性
▶コラム「大規模修繕工事におけるコンサルタントの役割と選び方
▶コラム「マンション大規模修繕の重要性とは?

2.新材料・新工法、いろいろ

マンションの改修に採用できる新しい材料や工法には、以下のようなものがあります。

①高耐久・高性能リーリング材

シーリング材とは、外壁や窓枠などの継ぎ目や隙間を埋めるための建築材料です。劣化すると弾力が失われ、漏水の原因になる恐れがあります。
新素材の高耐久シーリング材を使えば、これまでの約10年の耐用年数を、20~30年に延ばすことが可能です。初期費用は上がりますが、施工回数の削減により長期的なコストダウンが見込めます。

②立体的な外壁塗装(ジョリパット)

マンションの修繕工事を行う際、タイルの修繕にかかる費用は相当なものになります。そこで、美観を保ちながら施工が容易な塗装剤(ジョリパット)を使用することで、タイル張り替え作業を回避し、工期や費用を圧縮できます。

③カバー工法による外壁改修

外壁カバー工法とは、既存外壁を撤去せず、上から新しい外壁材を重ねる工法です。外壁が大きくダメージを受けている場合に採用されることが多く、既存外壁の解体を必要とする建物でも、撤去することなく設置でき、処分費用も発生しないなどコスト面でメリットがあります。また、既存壁と新しい外壁の間に空気層が生まれるため、断熱効果が期待できます。なお、材料自体に断熱性能を持たせた商品もあります。

 ●既存外壁の解体が必要な場合、処分費用が発生しない=トータルコストの抑制
 ●外壁材の空気層や、断熱材と組み合わせた材料がある=断熱性能の向上
 ●解体工事不要=工事中の建物への振動負荷の軽減

※なお、これら新材料・新工法には建物構造や立地などによる制限があるため、事前確認が必要です。

大規模修繕工事の新提案について▶コラム「大規模修繕工事「ロープ・ブランコ工法」という選択肢」をご参照ください。

3.新素材・新工法の特徴

新素材・新工法の主な特徴は以下のとおりです。

 ●高機能・高デザイン性
 ●高耐久・長寿命
 ●初期費用は高め、ただし長期で見れば経済的

採用には短期のコストだけでなく、長期的な費用削減につながるかどうかの見極めが必要です。設計会社と十分に相談し、修繕計画を立てることが推奨されます。

4.改修も視野に入れた大規模修繕を

「元に戻す」だけでなく、機能改善や快適性向上も視野に入れた修繕を行う場合は、設計の早い段階でその意思を伝えることが重要です。
新しい提案には手間やリスクが伴うため、「言われなければやらない」というのが建設業界の現実です。設計事務所に対して、方向性や要望を早めに伝えましょう。

▶コラム「修繕工事、成功のポイント」をご参照ください。

5.工事事業者の選び方

大規模修繕の設計が終わり、相見積もりを取得したものの、「事業者をどう選んでいいかわからない・・・。」大規模修繕工事にこのような悩みはつきものです。

講師の吉田氏は、事業者選定の際、下記のポイントを意識すると選定しやすくなると指摘します。

 ①見積取得は3~5社程度
 ②見積書記載の内容の精度(「一式」表記が多い事業者は要注意)
 ③過去の実績・経験値(規模や工事内容を確認)
 ④特殊工法への対応力
 ⑤地域性(近隣業者の方がコストを抑えやすい)

さらに、現地調査に技術者が同行しているかどうかも、重要な評価ポイントです。
そして何より、新しい提案への柔軟性や対応力を持つ事業者を選ぶことが、これからの修繕には欠かせないと、指摘されました。

相見積もり取得について▶コラム「新!”マンション修繕なびアプリ”使用感レポート」をご参照ください。


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いかがでしたか?
これからの大規模修繕工事には、今までの常識にとらわれず、柔軟にマンションの保全を考える必要がありそうです。
新材料や新工法を積極的に調べ、早い段階で設計事務所に提案するなど働きかけることで、大規模修繕工事を組合主導で行うことができるでしょう。
マンション修繕なび では、相見積もりの取得や信頼できる専門家とのマッチングサービスで管理組合の修繕や管理をサポートしています。初回無料相談や、無料セミナーをぜひご活用ください。

マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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