マンション修繕なびコラム 機械式駐車場使用料の値上げ、算出方法

2025.1.23

機械式駐車場使用料の値上げ、算出方法

こんにちは、マンション修繕なび 登録マンション管理士の大野です。

マンション管理に関する悩みの多くはとても似通っています。設備系で最も多いものは、「機械式駐車場」問題です。様々な修繕や部品取替えなどに毎年費用を投じているという組合や、長期修繕計画中の機械式駐車場再建築費用が原因で、修繕積立金が大幅に値上げされてしまいそう・・等です。

本日は「機械式駐車場利用料の値上げ」を検討する際の値上げ額の算出方法をご説明します。

コラム「管理費と機械式駐車場 ~なぜ管理組合会計から修繕費を出すのか問題~」も、ご参照ください。


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1.維持に必要な総額(支出総額)を知る

まず、機械式駐車場の維持管理に必要な20-30年分の費用を洗い出してください。例えば管理費会計においては「保守点検費」や「小修繕費」、長期修繕計画においては「塗装」や「部品取替え」、「再建築」などの費用です。駐車場の出入り口に電動シャッターなどがある場合は、その「メンテナンス」や「駆動部取替」「シャッター取替」費用なども合算する必要があります。

【機械式駐車場にかかる費用の確認】

会計確認資料
一般会計(管理費会計)収支報告書、管理委託契約書ほか
修繕積立金会計長期修繕計画書の項目「機械式駐車場」ほか

※上記資料で確認できない場合は、管理会社へお問合せください。

2.現状との差額を知る

「1」で算出した支出総額を算出期間年数で割り、その数値(年間費用)を契約台数で割って下さい。1契約当たりに必要な費用(年額)が算出できます。そして、その算出した費用と現在の1契約当たりの平均年間使用料を比較してください。

算出データ例

必要データ数値、数量備考
現状の契約台数60台 
将来の契約台数60台今後の増減を加味する
費用算出期間20年20~30年の長期で算出
想定支出総額2億円一般会計および修繕積立金会計から算出
現状の使用料収入720万円年間駐車場使用料収入

① 現状の収入(1契約当たり)を算出する

例)720万円÷60台(現状の契約台数)=120,000円/年・区画

② 今後必要になる費用(1契約当たり)を算出する

例)(2億÷20年)÷60台(将来の契約台数)≒166,600円/年・区画

③ 現状の収入と費用の差額を算出する

例)120,000円-166,600円=-46,600円/年・区画

この例では、1契約当たり平均約46,600円/年・区画の値上げが必要です。

上記計算を行うと、現状の使用料収入では必要となる費用が賄えない組合が多いのではないでしょうか。一方、収入が費用を上回っていても、その収入は管理費会計に組込まれ、将来の修繕のために積み立てられていない可能性があります。

3.注意!駐車場利用率は高経年するほど減少する

ここでご注意頂きたいのは、マンションが高経年するほど駐車場の利用率は下がる傾向にあるということです。上記の算出例では、契約台数を増減なしの60台と仮定していますが、現実問題としては契約減を見込んでおくべきで、値上げ額は算出した額よりも高く設定すべきでしょう。

また、値上げによりマンション以外の駐車場に契約を変更する居住者が出ないために、周辺駐車場の使用料と比較し、値上げ幅を決定する必要があります。

4.早急に議論を開始する

機械式駐車場の収入と費用の差額を確認した後は、下記のような対策を講じることができます。

①駐車場会計を独立会計化して使用料収入で費用を賄う

機械式駐車場使用料の値上げを行う

③機械式駐車場の減築や撤去・平面化を決定し長期修繕計画の見直しを行う

組合によっては、機械式駐車場にかかる費用は使用料で賄わず、不足分を組合会計からの充当で解決することもあるでしょう。或いは、値上げ幅抑制のために、再建築せずに減築や撤去を選択するかもしれません。

いずれにしても、早急に議論を始める必要があります。なぜなら、維持管理が長期に及び、その費用も高額となる機械式駐車場をめぐっては、利用する住民と利用しない住民とで利害が異なり、合意形成に時間がかかるのです。

コラム「どうする?どうなる?マンションの機械式駐車場」も、ご参照ください。

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いかがでしたか?
機械式駐車場は、管理組合財政に深刻な影響を与える可能性の高い問題です。このコラムの算出例を参考に、まずは現状を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。 マンション修繕なびでは、機械式駐車場の値上げや運営方法の検討、今後のシミュレーションなどを専門家に相談できます。議論開始のための勉強会開催もマンション修繕なび にご相談ください。ご相談は初回無料です。ぜひ活用ください。

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マンション管理
コンサルタント事務所
代表 大野 かな子
(マンション管理士)

国内メーカー勤務後、大手管理会社でマンション担当者として勤務。
これからのマンション管理には、“管理会社管理”や“自主管理”とは異なる第三の選択肢が必要と考え、マンション管理組合に対する管理ノウハウを提供し実務を支援する「ちいさな管理」を立ち上げる。
(株)ビル新聞社が発行する「ビル新聞」へマンション管理コラムを連載中。
マンション管理の専門家として、マンション管理に関する市場調査レポートを発表している。
ちいさな管理ホームページ:
https://s-kanri.com

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